●可部線

 可部線は太田川と切り離せんよ (2001年5月 創刊号)


 昨秋.今春にかけて、可部線可部.三段峡間の存廃に大きな影響をおよぼす試験増発期間がありました。

 沿線では多くのイベントが企画され、休日の車中は通勤ラッシュの都市交通のようにすし詰め状態になりました。今回は熱気で蒸し暑い車中で乗客の方におうかがいしました。
 


 この川は広島市民の命綱じゃね。今は水も汚くなったけど、昔は市内でも泳げたんよ。うちらは戦前から市内におるんじゃけど、あのころ面白いことをいいよった。

太田川清き流れと思うなよ毎朝かよう肥たごの船

 こんなこと言いよった。
 どういう意味かいうたら、あのころは、毎朝上の方の農家の人が広島へ野菜を持ってきて、帰りに私らのおしっこやうんちを肥料に使うけえいうて、持って帰りよっちゃったんよ。上の方で肥をまいても水はきれいじゃけえ不思議なねえ、いう意味よ。そういうことがのうなってからの方が水が汚いよね。どういうことかね。可部線は太田川と切り離せんよね。広島に太田川がなくなったら私ら生きていけんじゃろ。可部線ものうなったらいけんよ。

(窓際に座られて車窓からの風景に見入っていらした年輩の女性)
 


 わしはこの沿線に住んどります。普段は車で動いています。つぶしちゃいけん、いうんで、久しぶりに可部線に乗るけど、こうやってみると太田川もええながめじゃね。太田川いうのはこんとな川じゃったんか、いうのが分かるね。

 確かに、普段は可部線を使いません。でも、じゃけえいうていらん、言う話じゃないんよね。もちろん、観光も大事じゃけど、それより何より、個人の家に車があろうと、私らの住んどる地域がどうなるか、いう話ですよ。車いう物は個人がばらばらに乗るものじゃろ。でも列車いうのは、大人も子供も学生さんも、向かい合って座って、ゆっくり話をしながら動くものよね。これが大事なんよ。それはバスでもできん。こういう場が必要なんよ。人付き合いの大事さを考えたら、金儲けにならんけえ、いうて、やめりゃあええいうもんじゃないじゃろう。大体広島からの全体で見たら、可部線はそんなに困っとらんのじゃろ。

(水内駅から乗車された中年の男性)
 


 JRがどんな結論を出そうとも、この線路には列車が走りつづけるべきです。私はよそから広島へ出てきたんですが、広島という街は、まわりの農村、山村、漁村からいろんなものを吸収して大きくなったわけですよね。

 それが、もう大きくなれるだけ大きくなって、周りの人も減ったから、交通手段も減らせばいい、というのは傲慢な話だと思います。JRの姿勢も問題ですが、これからは広島市の姿勢も問われると思います。東京への交通の便ばかりよくするんじゃなくて、まず、足元をしっかりすべきよね。これからは東京東京いう時代じゃないですよ。

(リュックサックを背負って、登山帰りの若い男性)
 
 
 話を聞かせてくださり、有難うございました。

 車中のお話で気付いたのは、可部線を太田川と一体で考える方の多いことでした。その思いは、日常生活で可部線を利用しない広島都心の多くの方々が、「可部線をつぶしちゃいけん」と現在も熱心に乗車されていることと無関係ではないような気がしました。
 
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