雲月山の山焼き
〜芸北の伝統行事・地元とボランティアで復活〜
 本誌編集部 安江 浩  2008年 4月 第84号 


 山焼きというものを一度見てみたいと思っていた。4月6日のシンポジウムの帰りに理事のKさんから、12日に雲月山の山焼きがあることを知らされた。このところの週末は仕事やシンポの準備で、家族サービスもままならぬ負い目もあって、早速、妻を誘って出かけてみることにした。雲月山は「うづきやま」が正式名称のようだが、地元では「うづつきやま」「うんげつさん」でも呼ばれている。位置は北広島町(旧芸北町)の国道186号と浜田道に挟まれた島根県境にあって、広島からだと加計から滝山川沿いに上るのが近いようだ。

 
ボランティア200人以上

 当日は快晴で11時頃には山焼きが始まるだろうと聞いて車を走らせる。細見という集落から県道をほぼ直線に進めば雲月山に着く予定が途中の道を間違えて大佐山へ、引き戻してそれでも10時半には雲月山へ到着することができた。100台は停まれそうな駐車場はすでに満車で、これほど見物客が多いのかと感心しているとそれは大いなる間違いであることに気付いた。これらの車は当日の山焼きを実行される200人以上のボランティアの方達で、早朝から草刈などの作業をされていた。昼に戻られた方に聞いてみると、延焼防止のための防火帯をつくる草刈作業とのこと。火入れの後も細心の注意を払って延焼を防止するそうで、3年連続で来られているとのこと、物見遊山の私は恥じ入ってしまった。



 
溶岩流のような赤い炎

 雲月山の山焼きは牛馬の飼育が廃れ人手不足も重なって暫く途絶えていたそうだが、3年前に有志の呼びかけにボランティアの参加で復活した。農民は古くから放牧・採草に利用するため山焼きを行ってきた。山焼きは害虫を駆除し、土地を肥えさせ、出てきた新芽は牛馬を育てるに都合が良い。まさに山里の智恵が凝縮しているかのようだ。

 
連休の頃には新芽の芽吹き

 13時半に尾根近くで火が入れられた。いよいよ山焼きの開始である。パチパチと草木が爆ぜる音が聞こえる。暫くすると黒い絨毯がじんわりと山裾の方へ広かっていく。先端は赤い炎が溶岩流のように見える。組織だった消防団やボランティアの方が残り火を始末していく。いつの間にか山全体が黒い絨毯に変化している。とてもダイナミックな伝統行事に私もボランティアで参加してみたくなった。連休の頃には新芽も芽吹いて雲月山も新しい顔を見せてくれるだろう。皆さんも出かけてみられたらいかがでしょうか。

 
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