写真・絵画で甦る太田川

写真・絵画で甦る太田川 
(64)杣と木挽き


 以前、第23話のところで寺領の木挽職人のことを書いたが、今回は杣(そま)のことも書いておこう。

 杣と木挽きはどう違うのか。山師と呼ぶ山林業者が一山いくらで山ごと立ち木を買う。伐採に3〜4年間もかかるのを大山という。大山では杣が20人に木挽きが6人くらいの比で雇われて行く。立ち木を切り倒して枝をはつり一定の長さの角材にするまでが杣の仕事で、それを板に挽くのが木挽の仕事である。

その道具も木挽が使うのはマエビキとヨコビキとヤスリだけだが、杣はヨコビキ、チョウノ(元伐)、ソマチョウノ(削り)、キコリガマ、砥石、ヤスリなどを使う。マエビキは刃渡り2尺で幅が1尺2寸ほどの幅広のノコで板挽き専用のもの。チョウノには刃渡り3寸の伐採用と、刃渡り6寸位の削り用がある。写真では上側でマエビキを持って角材を挽いている方が木挽で、座って横挽きしている方が杣であろう。
 

木挽は板にするだけの仕事だが、杣の方は一本の木をどう使うか、その木その木で効率を考えて伐ることが要求される。木の太さによってどれだけの長さの材を何本とるか、とか、曲がっている木の場合はどこから切って材にするか、など考えて仕事しなければならない。

日当は能率給で杣の場合は断面積がいくらの角材を幾つ作ったかによって計算された。木挽の場合は板なら何間、枕木なら何本挽いたかで計算された。年代によって値段の上下があるが、3本挽いて自分ひとりの一日の食い俸くらいであった。大抵は12〜3本挽いたので一家4人分くらいの稼ぎになっていたようである。比較すれば杣の方が木挽より少し高かったが、雨が降った時は杣は仕事にならないが、木挽は屋根があれば仕事が出来るので1カ月にすれば杣と同じくらいになったという。

 大正年代以降鉄道の枕木需要が急激に増加した。枕木は1本の枕木の寸法が断面が厚み4寸、幅8寸、長さ7尺8寸あり、この断面の寸法から「シハチ」と呼ばれたが、規格は後に5寸と7寸に変更された。しかしゴシチとは呼ばずに「シハチ」の呼称が用いられていた。その材も栗を消費した後に楢、松など種類も増えて実に大量の枕木が製材されて山を出て行った。
 
(幸田光温) 
 
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