みずべのぶんかざい

『大朝の仕事歌』久枝秀夫編
 2005年12月 第56号


 かつての農山村では田の草取り、臼ひきなど農作業での労働歌が歌い継がれてきた。久枝さんは大朝の人でお母さんが特に多くの歌を集めておられたのがベースになっているということである。

 しかし内容を見ると大朝だけでなく加計や戸河内や更に県境を越えて石見の方でも同じ歌詞が歌われているものが多いことがわかる。幾つか太田川筋でも聞いた歌を拾ってみると。

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 雪はちらつく思いは積る胸の氷はいつ融ける

 来るか来るかと表で待てば門で狐がコンと鳴く

 山に伐る木は数々あれど思い切る木は更に無い

 嫌な殿御の親切よりも好な御方の無理が良い

 煙草吸なれ煙管は此処に中に思いが詰てある

 恋し恋しと鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦す


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 これらの歌詞の成立はそれほど古くないと思われるが確たることはわからない。
 伝承の主役は女性であったことは確かである。

 図書館で読むこと以上に無形文化財として伝承することも必要と考えられる。
 
 
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