
渡辺 泰邦さんは、四十年をこえる植物研究者としてのフィールドワークの傍ら、地域の植物方言や植物に関わる民俗を記録してこられた。
かつて植物と人の暮らしはお互いに溶け合って存在し、方言は両者の関わり合いを生き生きと表現してきたが、多くの植物の消滅や希少化と表裏の形で、方言や民俗は忘れ去られようとしている。本書は、「『自然史』は、地域の風土が育んだ民俗を抜きにして、決して語ることはできない」という渡辺さんの揺るぎない信念のもとに、消えゆく県内の植物方言や民俗を可能な限り詳細に後世に伝えるべく、編集された。方言や民俗の伝承は、私たちが自然との共生関係を取り戻していくための貴重な手がかり、足がかりとなるだろう。
たとえば、畦道の秋の女王「ヒガンバナ(彼岸花)」。ヒガンバナは、日本で一番方言名の多い植物らしい。記者が育った広島市安佐南区沼田町伴では、その汁を浴びるとかぶれると言って、「カブレンソウ」と呼んでいた。あなたのところではいかが? (哲)
「広島県の植物方言と民俗」は、自費出版です。比婆科学教育振興会に注文されれば発送されます。事務局TEL・FAX 08247‐23234(千部限定出版で、残部は少ないです) |