『太田川史』 建設省(現国土交通省)太田川工事事務所編


 平成五年発行  二百八十五頁
 太田川工事事務所が、太田川直轄改修六十周年、放水路概成二十五周年を記念して発行した。太田川流域の自然・歴史・産業・経済・社会・文化・洪水・治水・利水・環境・今後の河川改修について、「教科書」的にまとめてある。事典として使うには便利。ただし、編集者の立場から、明治以降の太田川の開発が自画自賛的に描かれていることに注意。私たちは「近代化」の過程で傷つけられた人々や自然のことを忘れることはできない。

 たとえば高瀬堰・温井ダムなどの利水・治水事業の根拠として挙げられている数字について、専門家でない読者が批判的に検討できる材料が与えられていない。読者は数字は立場が「作る」ものだということを意識して、素直に「ななめに」眺めるセンスが求められる。

 机上の専門用語より、日常生活の常識・感覚から生まれる簡単な足し算や引き算から分かることの方が、真理に迫っていることもあるのではないだろうか。

 「太田川史」は非売品ですが、流域市町村の図書館で閲覧可能です。
 
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